相続対策としての不動産投資 大規模修繕費

相続対策としての不動産投資(2)

相続対策として不動産投資や賃貸建物建築をする際に借り入れを行うと、相続財産が減少するので、一定の節税効果が期待できます。

しかしながら借り入れに伴い一定のリスクを生じます。

今回はそのうちの「大規模修繕のための積み立て」について、お伝えしたいと思います。

大規模修繕費を計画しておくことの重要性

大規模修繕費は加味されていないことが多い

投資用不動産の購入や賃貸住宅建築を検討する場合、借入返済時期までの事業収支予想を不動産会社や建築会社から説明されることがあります。
賃貸収入については、空室率や賃料下落率を加味した売り上げが、支出については、管理委託費、建物管理費、修繕費、固定資産税・都市計画税、水道光熱費、保険料などが計上されています。
しかし、 上記の修繕費には一般的な小修繕(水漏れ修繕、電球などの交換、共用部の壁や床などの軽微な破損修繕、 設備機器等の小修繕等)しか含まれておらず、屋根の塗装・補修や防水・葺き替え、外壁塗装やタイル張り補修、給湯器やエアコンの交換、 給排水管の高圧洗浄・取り換え、階段や廊下などの鉄部塗装や防水などの大規模修繕費が含まれていないことが多いのです。
大規模修繕が必要な個所と修繕時期の目安

建物はメンテナンスが必要です

建物も年数経過とともにそれに応じたメンテナンスが必要です。

例えば、鉄筋コンクリート造の外壁は一般的に12年目くらいに補修・塗装工事が必要といわれており、2000年代前半に建てられた住宅は、今、まさにその時期を迎えています。

放っておくと、人が住めない状態にもなりかねません。メンテナンスには、当然、費用もかかります。安定的な賃貸経営のためにも、大規模修繕に備え、定期的なメンテナンスを予定しておくことが重要です。

民間住宅の建築時期

激化する入居者獲得競争

国土交通省が2019年3月に公表した「賃貸宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について〜計画修繕を含む投資判断の重要性〜」において、過去20年間の着工戸数と建物の滅失率の傾向が今後も同じペースで継続するものと仮定した上で、今後20年の貸家の戸数を計算した結果が示されています。

そこでは、築30年超の貸家が2017年時点において1186万戸であるのに対して、20年後には約1.5倍の1808万戸に増加するものと推測されています。また、築50年超の貸家は、20年後に約3.5倍の830万戸、築40年超は約2.0倍の1374万戸に増加すると推測されています。

これらは賃貸経営の継続を前提とする場合、老朽化した貸家の増加により老朽化物件同士の入居者獲得競争が従来以上に激しくなる事象が想定されるということです。
つまり、賃貸住宅のオーナーは、自
らの賃貸住宅を効率的・効果的に維持管理していく意識がこれまで以上に求められることになります。
それにもかかわらず、投資計画の段階
で、あるいは賃貸住宅建設計画の段階では、大規模修繕の計画が加味されていないことが多いのです。

入居者募集イメージ

建物構造や間取別の大規模修繕の費用目安

大規模修繕費の目安とはどの程度なのでしょうか。建物の構造や規模などによって異なりますが、 国土交通省が公表している「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」が参考になります。家賃の下落率や空室率は増加しますが、大規模修繕の積立金額は一定ですから、時間の経過とともにその割合が高くなっていくことには注意が必要です。

鉄筋コンクリート造 1LDK~2LDK 20戸の場合 

鉄筋コンクリート造20戸(1LDK〜2LDK)の場合、30年間で約4490万円(1戸当たり約225万円)の大規模修繕費用がかかることになっています。

1戸当たりで換算すると約7万5000円(225万円÷30年)を毎年積み立てておく必要があるということになります。

仮に1戸当たり10万円で貸せる場合、年間賃料に対して最低でも6.25%(7万5000円÷120万円)を大規模修繕の積立金として見積もっておく必要があるということです。

 

鉄筋コンクリート造2LDK20戸の場合

鉄筋コンクリート造 1K 10戸の場合

鉄筋コンクリート10戸(1K)の場合、30年間で約1770万円(1戸当たり約177万円)の大規模修繕費用がかかることになっています。

1戸当たりで換算すると約5万9000円(177万円÷30年)を毎年積み立てておく必要があるということになります。

仮に1戸当たり5万円で貸せる場合、年間賃料に対して最低でも9.83%(5万9000円÷60万円)を大規模修繕の積立金として見積もっておく必要があるということです。

 

鉄筋コンクリート造1K10戸の場合

木造 1LDK~2LDK 10戸の場合

10戸(1K)の場合、30年間で約2160万円(1戸当たり約216万円)の大規模修繕費用がかかることになっています。

1戸当たりで換算すると約7万2000円(216万円÷30年)を毎年積み立てておく必要があるということになります。

仮に1戸当たり7万円で貸せる場合、年間賃料に対して最低でも8.57%(7万2000円÷84万円)を大規模修繕の積立金として見積もっておく必要があるということです。

木造10戸2LDKの場合

木造 1K 10戸の場合

10戸(1K)の場合、30年間で約1740万円(1戸当たり約174万円)の大規模修繕費用がかかることになっています。

1戸当たりで換算すると約5万8000円(174万円÷30年)を毎年積み立てておく必要があるということになります。

仮に1戸当たり4万円で貸せる場合、年間賃料に対して最低でも12.0%(5万8000円÷48万円)を大規模修繕の積立金として見積もっておく必要があるということです。

木造10戸1Kの場合

大規模修繕費の積み立て

大規模修繕のための資金を貯めていないが故に、必要な大規模修繕をできないとなると、他の賃貸物件との対比で競争力は低下します。

結果として空室率の上昇、賃料下落率の上昇が起こります。 そして建物の劣化、 機能の陳腐化(旧式の設備のままで機能性が相対的に低くなること)が競争力をさらに低下させ、負のスパイラルに陥っていくことになります。

これを避けるためにも、投資の検討段階から大規模修繕費を踏まえた事業収支計画を策定し、最終手取り額からその資金を積み立てておくことが重要なのです。

大規模修繕工事イメージ写真