急増する空家問題
現在、全国には約850万戸の空家が存在しています。その多くは被相続人が住んでいた自宅であり、それを相続人に適切に継承・対策されることなく放置されていることが原因です。空家はここ30年ほどで2倍にも増加し、解決するべき重要な問題となっています。
今回は、増え続ける空家問題を相続する側・不動産のオーナーとなる側の観点から、空家のリスク、空家にしないための対策、空家の活用法についてお話していこうと思います。
空家のリスク
空家には大きく分けて以下の3つのリスクが発生します。相続人は十分理解しましょう。
- 空家保有コスト(固定資産税・水道光熱費等)の負担
- 空家の老朽化(維持管理・修繕)
- 空家に起因する賠償責任(所有者責任)
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1.空家保有のコスト
主な費用としては固定資産税等の税金・水道費や光熱費・火災保険料などがあります。
水道費等の公共料金や保険料は空家であれば不要と考える方も多いですが、水道や電気を止めると修繕が行き届かなくなり、以下の2でも解説しますが空き家の老朽化問題を促進させることとなります。
空家の所得時には相続税が発生し、その後固定資産税が課税されていくことになります。住宅地であれば「住宅用地特例処置」により軽減されることもありますが、毎年の負担であることに変わりはありません。また、やみくもに解体更地にしてしまうと翌年から土地の固定資産税が数倍に跳ね上がってしまうことにも注意が必要です。
火災保険の重要度が高いことも重要な点です。空家は放火被害にあいやすい側面があり、無保険状態であるリスクが高いということができます。また、空家は一般住宅と比べ保険料が高い物件とされるので、保険料がます傾向にあります。今後のことを考慮し、誰かが住む可能性が残っているならば、住宅としてそのまま残しておくケースもあるので保険会社としっかりと確認しておくことも重要です。
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2.空家(建物)の老朽化
一般的に人の住まない建築物の老朽化は早く進行するとされています。窓や戸の開閉も極端に少ないことで通気性が悪化し、湿気がたまりやすく腐食が進行し、屋根や木の部分の老朽化が進むことで、カビやダニなどが繁殖しやすくなります。
敷地内樹木等の剪定費用、木の枝や落ち葉が隣地や道路等に落ち、近所に迷惑がかかってしまうケースが頻出しています。これらは近隣住居者とのトラブルに直結するため注意を払う必要があります。
また、自然災害などによって発生した雨漏りなどの発見が遅れやすい傾向にあるため、被害がさらに甚大になっていく場合が多くなります。
これらの空家の老朽化に関する問題は賃貸や売買を試みた際の売れない・貸せないといった結果の原因となってしまいます。そのため適切な管理と対策が重要です。
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3.空家に起因する賠償責任
管理不全が原因で空家のブロック塀が倒壊・外壁や瓦などが落下して通行人にけがをさせた等の事故が過去に多く発生しています。
ブロック塀や外壁材などは工作物に該当する為、空家の所有者には工作物責任の規定(※注)に基づく賠償責任を負います。
※注:民法第717条にて定められている“土地工作物責任”とは、家屋などの敷地に保存・設置されている工作物の安全管理が行き届いておらず、それによって第三者に損害を与えた場合に工作物の占有者が賠償責任を負う規定です。
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空家にしないための対策
空家を問題化させないために親が生前のうちに準備しておくことができる以下の3つのことが重要と考えます。
1.生前整理をしておく
相続が発生する前の親が比較的元気なうちから生活している家財の中から不要と思われるものを整理しておくことです。
相続が発生するとそれらの生活用品は相続人にとってほとんど不用品になると思います。しかも、その処理には少なからず費用と労力がかかります。
事前に準備してくことでいざという時の負担を軽減することができます。ただし親が使用している生活用品なので親の気持ちに寄り添いながら上手に進める配慮が必要です。
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2.後見制度・家族信託の検討
成年後見人制度
成年後見人制度には任意後見人制度と法定後見人制度の二種類があります。これらの二つの大きな違いは本人が後見人を選べるかどうかになります。
法定後見人制度ではまれに親族が選任されることもありますが、多くは親族以外の専門家等が選ばれます。さらに、こちらはだれが選ばれても不服を申し立てることはできず、後見開始後にトラブルになった場合でも解任されることは稀です。
また、財産管理については被後見人の財産維持・保護が目的であるため、後見人が自由に実家等を売却することはできません。さらに、本人の症状が改善されない限り、毎月数万円の報酬を払い続けなければならない点にも注意が必要です。
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家族信託
家族信託とは家族と結ぶ信託契約であり、成年後見制度に代わるあらたな認知症対策や財産管理、相続対策の手法として注目されています。
家族信託は、所有者である親が元気なうちに、信頼できる子どもや親族と契約を結び、親に代わって、子どもなどが財産を管理できるようにする契約です。家族信託することで、子どもは不動産の修繕等だけではなく、売却することや、人に貸すこともできます。
不動産を任せる人を「委託者」、任される子ども等を「受託者」、不動産から利益を受ける者を「受益者」と呼びます。
詳しくは「不動産と家族信託」でも解説していますのであわせてご参照下さい。
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3.遺言の準備
相続の発生に伴う遺産分割が未解決で権利関係が定まらず、手続が先送りにされているケースが少なくありません。相続関係が煩雑であったり、相続人の中に行方不明者や認知症の方がいると、残念ながら実家の処分が手つかずとなってしまいます。
遺言があれば、このようなケースであってもスムーズに自宅を承継させることができます。空家にしないために、相続人の誰かに実家を託し、処分等をお願いしておくことも効果的な空家問題対策となります。
遺言はいつでも撤回・修正ができますので、今考えている事を今すぐ記しておくことをお勧め致します。遺言は一般的に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言を法務局において保管する遺言書保管制度が創設され、令和2年7月10日から運用が開始されました。 自筆証書遺言について、法務局における遺言書保管制度を利用した場合には、遺言書の紛失やこれを発見した者による破棄、隠匿、改ざん等の危険を防止することができ、また、家庭裁判所における検認の手続も不要となります。
公正証書遺言
公証役場の公証人が関与して、公正証書の形で残す遺言書です。自分一人で書く自筆証書遺言に比べると、公証人という法律の専門家のチェックが入り、共同して遺言書を残せるため、遺言内容の確実性があり、遺言の効果も無効になることが少ないという点が大きな特徴です。
特に、特定の誰かに確実に遺産を渡したい、自分の気持ちをきちんと文書で残したいという場合におすすめです。
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空家の活用
前述した空家に付随するリスクを理解し、空家を活用する準備を進めていくことで格段にスムーズに空き家をうまく活用することが可能となります。
ここでは、空家をうまく活用するための3つの手段について説明します。
自ら居住する(自己活用)
幼いころ過ごしていた思い出の残っている実家に将来移り住みたいと考えている人も少なくないと思います。
固定資産としてのコストも少なく、敷地も広い。環境も空気もきれいで、庭などで趣味に取り組むことも可能かもしれません。
交通手段は少ないかもしれませんが、自家用車や自転車をうまく利用することでより良い生活が送れるでしょう。
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賃貸に出す
建物はまだ使用できる状態だが今後使用する予定がない方、または将来的に自分で居住する予定があるが当面は使用しない方には賃貸をお勧めします。賃貸もすぐに入居者が決まることは稀だと思いますので、募集をしている期間中も建物を適切に維持管理する必要があります。
定期借家契約
従来の借家契約とは異なり、契約期間が満了すると確実に貸借人に返還されます。そのため、将来の予定に合わせて貸したり、一度化してからのちに売却したりといったことも可能です。
サブリース(一括借り上げ)
不動産会社はもちろん、近年ではリノベーション会社、介護系の事業者などが空家を借り上げて改修を行い、別の借主に転貸するという形もあります。これらを利用してみるのもいいでしょう。
空家管理(入居者募集期間)
人が済まない家は老朽化が早く進行します。人に貸せる状態を保つためにも、定期的な換気(湿気によるカビ対策)や通水(水道管の腐食防止)、雨漏りの早期発見、植栽の剪定(樹木繁茂クレーム)などが必要です。
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売却する
空家を利用する予定が無いのであれば思い切って売却する方法もあります。空家を売却した際の譲渡益から3000万円まで控除することができる「居住用財産(空家)の譲渡所得の特別控除」の制度も有効に活用しましょう。
売却を考えている方の中には、契約が決まったら片付けようと考えている方がいます。しかし、契約締結後引き渡しまでの期間は通常1~3か月程度です。
整理や片付けには相応の時間がかかりますので早めに片付けておくことが賢明な判断といえます。
空き家の場合には雨漏りやシロアリによる被害がのちに発見されるケースも少なくありません。後のトラブル予防の為にも第三者機関による建物状況調査「ホームインスペクション」の実施も要検討です。
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空家でお困りならコープランドへ
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